幻のNHK少年ドラマ版。原作とは違うパラレルワールドの大冒険が展開されていた。

タイム・トラベラー

石山透・作 

1984年

( 帯より)

 SF青春ドラマの傑作が還ってきた。

 1972年、少女は時間の流れを跳んだ。そして、今、あなたの前に。

 

 「ラベンダーの香りが少女を狂わせました……。

 そう、科学では計り知れないことが、今にも起るかもしれません。

 あなたの身近なところに……」

 

 テーマ曲楽譜、完全放送リスト、初公開写真、NHK少年ドラマシリーズのすべてがわかる魅惑の一冊。

 

     タイム・トラベラー (ヤングアダルトブックス)

 

 

(ケン・ソゴル消滅の危機! 芳山和子が時間と空間を駆けまくる!

     幻のNHK少年ドラマ版では教師や大学教授も巻き込む大冒険活劇 が展開されていた!!)

 

 NHK少年ドラマの原点であり代表作でもある『タイム・トラベラー』のシナリオ集です。

 『タイム・トラベラー』の全6話、『続 タイム・トラベラー』の全5話のシナリオが完全収録されているお宝版であります。

 番組冒頭で城達也が語る不思議なエピソードから、

 「未来人ケン・ソゴルの運命はどうなるのか?そのお話はまた来週」……

というようなナレーションまで収録されているのが楽しいですね。

 

     タイム・トラベラー (ヤングアダルトブックス)

 

 残念ながら私はNHK少年ドラマシリーズをリアルで見た世代ではありませんが、本書を読んで疑似体験したような気になれます。

 

 読んでみてびっくり仰天、これがあの『時をかける少女』なのかと驚きます。

 原田版や内田版はかなり原作に忠実なのですが、本作では原作をはるか離れて時空を駆け巡る大冒険が展開されていました。

 まさにパラレルワールドの大冒険です。

 

 深町一夫は和子に早々に未来から来た未来人だと打ち明け、深町家から消えてケン・ソゴルとして行動。

 そしてあろうことかケン・ソゴル自身がエネルギー消耗のためにタイム・ルールによって消滅の危機に陥ります。

 ケン・ソゴル救出のためにタイム・トリップする和子!

 そして和子の異常な経験は担任の福島先生の知るところとなり、大学病院の望月博士まで乗り出してきます。

 救出されて大学病院で治療を受けるケン・ソゴル。

 そしてタイム・トラベルのための薬を調合するために実験室を提供され、完成の暁には記者会見を開く……。

 

 原作はあっさりと簡潔に完成された珠玉の短編でしたが、本作はタイムトラベルの冒険談が十分に楽しめる大冒険活劇でした。

 続編の『続・時をかける少女』の世界とは、筒井康隆の『時をかける少女』よりむしろこのNHK少年ドラマ版『タイム・トラベラー』の方がストーリー的に連続しています。

 『続・時をかける少女』の幻の前作、と言えるでしょう。

 

 一番印象に残ったエピソードは、戦争中に亡くなった娘さんを連れて帰ろうとして消えてしまうおばさんの話ですね。

 偶然ケン・ソゴルが完成した薬をこぼしたためにタイムスリップ能力を得たおばさんが結核で亡くなった娘さんを連れ戻そうとして昭和20年の終戦の年にタイムスリップ。

 

 放送当時の昭和47年から見れば、終戦の年はまだわずか27年前。

 当時はまだ戦争の悲惨な体験が身近な記憶として残っていたんですね。

 思えば2011年の現在、1945年からもう66年も経過しています。

 戦争の悲惨な体験や軍国主義の理不尽さを直接知る世代も少なくなってきています。

 SF小説やSFドラマを楽しめるのも、自由で平和な民主的体制があってのこと。

 歴史の真実は継承していかねばならないでしょう。

 

 なお、『続 タイム・トラベラー』と続・時をかける少女』 の関係については。

 シナリオ版『続 タイム・トラベラー』を執筆者の石山透さん本人がノベライズ化したのが『続・時をかける少女』 。

 さすがに著者が同じだけに、ほとんど同じです。

 しかしほんの少し、違った部分もあります。

 ノベライズ化する際に執筆者の石山さん自身がこう改めた方がいい、と改めたものと思います。

 特に終わり方というか、和子とケン・ソゴルの別れの部分が少し違っています。

 ですから、NHK少年ドラマ版を見て覚えておられる方が続・時をかける少女』 を読んで、

少し違っていると思われることがあるかもしれません。

 

 

 このNHK少年ドラマ版は石山透の脚本によります。

 『タイム・トラベラー』『続 タイム・トラベラー』がここまで多くの人に愛され、記憶に残る名作となり、NHK少年ドラマシリーズの礎を築いたのは、石山さんの尽力によるところも大きいのではないでしょうか。

 石山透さんの功績も忘れてはならないでしょう。

 

    [wikipedia:石山透]

 

  さて、この不朽の名作・石山透版『タイム・トラベラー』ですが、現在は入手困難となってプレミア価格となっております。

  

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  ところが何とこの本が復刊ドットコムで復刊リクエストされているではありませんか!

 

 

 

 『タイム・トラベラー』の映像自体は消去されて現存しないということでしたが、最終回のみが発見され、DVD化されています。

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 最終回以外の他の回は音声のみ残っていて、このDVDには特典として収録されているようです。

 

  映像の再現はほぼ不可能ですが、シナリオを見ればその一端を味わうことができます。

  語られることの多い貴重な歴史的名作の完全シナリオ版を復刊する意義もあるのではないでしょうか。

  『続・時をかける少女』に続いて本書もぜひ復刊を!

 

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    タイム・トラベラ− 筒井康隆「時をかける少女」より

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  ★ 20世紀少年少女SFクラブ 『時をかける少女

  ★ 20世紀少年少女SFクラブ 『続・時をかける少女

    

    [wikipedia:時をかける少女]      [wikipedia:芳山和子]  

    [wikipedia:タイム・トラベラー]    [wikipedia:続 タイムトラベラー]

 

    [wikipedia:時をかける少女 (1983年の映画)]   [wikipedia:時をかける少女 (アニメ映画)]

    [wikipedia:時をかける少女(ボクたちのドラマシリーズ)]

   [wikipedia:時をかける少女 (2010年の映画)]    [wikipedia:光の惑星]  

 

   [wikipedia:石山透]   [wikipedia:筒井康隆]

    [wikipedia:少年ドラマシリーズ]    [wikipedia:ジュブナイル]

 

 

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