21世紀を考えよう!
金の星社 少年少女21世紀のSF(2)
怪惑星セレス
(宮崎惇・作/大古剋己・画)
(1968年12月初版)
★(登場人物)★
マサル……3週間前に地球から火星植民地に転校してきた。小学5年生。
タケシ……マサルの兄。ボーイ・スカウト火星第三隊の隊長。
ミサコ……マサルの姉。ガール・スカウト火星第三隊の隊員。
フジキ博士……マサルの父。医師。電子工学者。
ヒロシおじさん……マサルの母の弟で24歳。フォボス宇宙大空港で、ロケットエンジン検査技師をしている。
ミドリ……フォボスに住む小学5年生。父はフェリーロケットの機長。
ポピン……フジキ博士が作ったアンドロイド。
クルクル……セレスの荒野で、マサル達が助けた生物。クラゲのような形をして、2本の角をクルクル回しているため、クルクルと名付られた。
★(あらすじ ネタばらし注意!)★
小惑星セレスで訓練していたボーイ・スカウト火星第五隊が行方不明になった!
マサルの兄が隊長を務める第三隊が捜索に向かう。
同行を断られて悔しい思いをしたマサルは、両親やヒロシおじさんを騙し、フォボスで知り合ったミドリちゃんを連れてセレスに向かい、独自に調査を開始する。
行く手に待ち受けていたのは、セレスの荒野に生息するアリジゴクのような怪奇生物・ゴーゴン!
そこで彼らはゴーゴンの罠に落ちたクラゲのような生物を助けるのだが。。。
★(感想: ボーイスカウト大活躍!単純に楽しめる冒険活劇!)★
(※ネタばらし注意!!)
少年少女21世紀のSFシリーズについては、今まで6冊読んできました。
世界観や設定が複雑で、なかなか難解な作品が揃っていたのですが、本作品はあまり難しい部分はなく、
単純に楽しめる冒険活劇となっています。
主人公のマサルはカブ・スカウトメンバー。10才から12歳までの、まだボーイ・スカウトになれない少年団員ということです。
ボーイ・スカウトとは何か。
宇宙警察に協力し、未知の宇宙で遭難したロケット船や、人間などを救助したりする、危険なレインジャー活動を行う
と書かれています。
未来の世界ではそんな危ないことをボーイスカウトにやらせてるんですか!
本作品でも、行方不明となったボーイ・スカウト第五隊の捜索はボーイ・スカウト第三隊に丸投げです。
大人は一体何をしてるんでしょうか?
まあジュブナイルの設定なのだから仕方ないことでしょうが。
本作品の巻頭に献辞が掲げられています。
ボーイ・スカウトとしてなくなった
弟・健に捧ぐ
弟さんへの思いが込められている作品なのでしょう。
ボーイ・スカウトSFということもできます。
さて、主人公のマサルは、俺が俺がの気が強い子です。
危険な捜索活動に同行を断られると、両親やヒロシおじさんなどを騙して宇宙船まで手配し、
フォボスで知り合ったミドリちゃんまで連れてセレスまで行ってしまいます。
そんな簡単に宇宙旅行ができるんか、手続きが甘すぎないか、とも思いますが、
そもそもジュブナイル作品の主人公がそんなことしていいんかい!?
まあ、最後には反省して謝っていました。
それでこそジュブナイル小説の主人公だ。
マサル君大活躍で事件は解決し、めでたしめでたしのハッピーエンドで終わったわけですが、
それにしても、その間、正規に組織された捜索隊は、どこで何をしていたのでしょうか?
「怪小惑星セレス」
本書に登場するセレスとは、火星と木星の軌道の間に存在する小惑星群の中で、最大の小惑星とのこと。
本作品中では、元は大きな惑星であったが、文明の暴走のためにバラバラに破壊されてしまった、と示唆されています。
地球もそんなことにならないように。
なお、セレスは現在、準惑星とされています。
それまでは小惑星と呼ばれていたようで、「惑星」と呼ばれていた時期はありません。
本書でも作品中では、小惑星とされています。
しかしタイトルはなぜか「怪惑星セレス」。
「怪小惑星セレス」というより語呂がいいからでしょうか?
[wikipedia:ケレス (準惑星)]
「オレゴン渦動」
作品中に、狂った空間が出てきます。
アメリカのオレゴン渦動に似ている、と説明されています。
古代セレス文明で使われていたエネルギーの名残りか?と説明されていました。
とすると、オレゴン渦動も、古代文明の名残り?
オレゴンの渦【oregonvortex、オレゴンヴォーテクス】
[wikipedia:オレゴン・ヴォーテックス]
重力無視!常識が通じない場所・オレゴンの渦
重力が歪む場所!『オレゴンボーテックス』の謎 - 不思議.net
「宇宙共通語エスペラント!?」
本作品中、
ボーイ・スカウトでは国籍の違う隊員同士は、エスペラント語で話しているようです。
「エスペラント語は、1887年に、ザメンホフというポーランド人がこしらえた言葉で、世界語とよばれ、
いろいろな国の人びとのあつまっている月、金星、火星の植民地では、それが日常語として、ふつうにつかわれていた。」
という説明があります。
さらに、巻末の【用語注解】でも説明があります。
■エスペラント語…物語の中にも説明されているように、1887年、ポーランドのザメンホフがつくり出した国際語。
まだ宇宙の日常語になっているわけではないが実際に世界じゅうにひろまっていて、日本にも、東京に「日本エスペラント学会」がある。
金の星社少年少女21世紀のSFシリーズでは、第1巻『チタンの幽霊人』(瀬川昌男・作)でも、
宇宙時代の宇宙標準語として、エスペラントが採用されていました。
チタンの幽霊人
http://sfclub.sakura.ne.jp/21csf01.htm
また、手塚治虫さんが、「漫画はエスペラント語」と言ったということです。
OLDIES 三丁目のブログ ■[学問]「漫画はエスペラント語」(手塚治虫)
当時は、エスペラントが未来的・進歩的な言語だと、思われていたのかもしれませんね。
しかし、当時思い描かれていた理想的な未来は実現することはなく、エスペラントが普及した未来世界も同じく。
今では時代遅れのレトロな言語、というイメージとなっています。
ついでに、私がエスペラントをマスターして使いこなすという未来も実現することはできなかったのでした。
2014.02.04
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