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夢と冒険の世界へ! SFベストセラーズ(鶴書房)

続・時間砲計画


   豊田有恒・石津嵐(作) もとのりゆき(絵) 1978年9月10日初版発行

      
    ↑SFフェアーオビ付き!締め切りは1978年9月30日消印有効! SFエプロンって何だよ?


 ★(あらすじ:表紙折り返しより)

  夏休みに福島県の小名浜にやってきた映二。
  その目の前で、原子力船ラザフォード号が消滅した。バラ色の閃光が走った直後だった。
  よみがえる時間砲の恐怖。
  小名浜に集結した映二たちは、再び時間砲のえじきとなる。
  7千万年前、白亜紀。巨大な首なが竜を襲う、奇怪な恐竜の群れ!!
  彼らの手には、なんと<短剣>が握られていたのだ!!
  「時間砲計画」の続編、遂に登場!!



                  


 ★(感想:爬虫類型古代人との異種接近遭遇!!作り話をどれだけリアルに描けるか、そこが勝負どころだ)

  『時間砲計画』 http://sfclub.sakura.ne.jp/sf07 の続編ですね。
  正編で活躍したキャラが再び大活躍。
  生きている標本を発見して感動したエッケルト博士が
 「うーむ、むむむ……。」
 とうなる設定が好きだったのに、忘れられているのが残念。
  
  正編では、研究所ごと過去にタイムスリップしたので、まだ現在に戻れる可能性がありましたが、今回は着の身着のままでタイムスリップ。
  これでは帰れる可能性はありません。
  もし私が同じような目にあったら、絶望して自暴自棄になり、狂ってしまうかもしれません。
  しかし本書では、みんな呑気に探検なんかしています。
  おおい、何でそんなに平気なんだよ!!
  何かそこのとこ、リアリティを感じられず、そこが“作り話”なんだな、と思いました。

 「このとき、だれの胸のなかにも、これからどうなるのだろうといった不安感が渦巻いていた。しかし、それを、いま考えこんでしまったら、失意のドン底におちこんでしまうだろう。
  いまは、ただ、できるだけ陽気にふるまう必要があったのだ。」

  
  この文章を読んで、私は自分の至らなさに気付きました。
  もし私が同じような目に合えば、このように考え、ふるまうことができるでしょうか。
  読書ではこういったことを学ばないといけないですね。
  
 
  本作では、ドロマエオサウルスという知能を持った恐竜との交流が描かれています。
  集団生活をし道具を使い言葉のようなものまで使っているという、かなり知能を持った生物として描かれています。
  本当にそうだったのでしょうか。
  想像をリアルに描くのが小説の醍醐味です。


   [wikipedia:ドロマエオサウルス]   [wikipedia:ドロマエオサウルス科]



  で、このドロマエオサウルスがどんな風なのか、挿絵が幾つかあるのですが、どうもあまりリアリティを感じません。
  正編の挿絵はキャラが立っていて印象に残ったのに、本書の挿絵は、場面選択・構図・タッチにおいて、
あまり私の好みに合わないのか、印象に残りませんでした。


    

  表紙の画像も、中途半端に劇画調だし、なぜこの構図なのか?私のイメージに合っていません。
  挿絵を描いている方はもとのりゆきという方のようで、実は確かな実績を持った実力者のようです。
  立派な公式サイトがあります。
  
  もとのりゆき公式サイト http://moto-noriyuki.com/
 
  このサイトで紹介されているような絵は好きです。
  本書は白黒だから良さを発揮できなかったのでしょうか。
  氏の作品は元アメリカ大統領クリントン氏も所蔵しているそうです。
  そんな大家が若い時代に挿絵を描いた本書は、もしかして、貴重では?
  
  子ども恐竜人とゴン(伊作じいさんの飼い犬。一緒にタイムスリップしてきた)との交流が発展するのかと思ったら
中途半端に終わったとか、瀕死を負ったギッガはその後どうなったのかとか、設定が忘れられたのかと思われる部分もありました。
  それでも、読んでいるうちに恐竜人との交流が自然のように思えてきて、やはりそれは描き方がうまいということでしょう。
  さて、彼らは現代に帰ってくることができるのでしょうか?
  それとも、そのまま白亜紀に置き去りになるのでしょうか?(第三作が書かれなかったのはそのため?)
 

 「あとがき」で、石津嵐さんは、この物語の成立過程について説明されています。

  
 「豊田有恒さんは、一年ほど前、この「続・時間砲計画」のもとになるお話を、「過去の翳」という題名で短編小説にしました。
  そのあと、豊田さんは、この素材をもっとふくらませて、「ダイノサウルス作戦」という長編SF小説に仕上げています。」
  
 「しかし、「過去の翳」にしても、「ダイノサウルス作戦」にしても、古生物学や地質学など、専門的な知識を理解する必要があり、少年少女のみなさんには、いくぶん難解な作品といえます。
  そこで、わたしは、なんとか、この面白い作品を、みなさんにもわかりやすく出来ないものかと考え、豊田さんに相談したわけですが、その結果できあがったのが、この作品です。」

  
  原作をジュヴナイルに書き直し、それがジュヴナイルSFシリーズに収録されたのですね。
  海外の大人向けSFをジュニア向けに翻訳したシリーズは日本にも多くありました。
  本作品は、日本の原作をジュニア向けに翻訳したものだというのです。
  SFベストセラーズはそんな試みもしていたわけです。
  もしSFベストセラーズがその後も存続していて、ジュニア向け改作シリーズも増えていっていれば、
素晴らしいシリーズとなっていたはずだし、少年少女に大きな夢と希望を与え続けたことでしょう。
  SFベストセラーズの中断、残念です。  2015.11.28(sabato) 



  編集後記および参照リンクなど
    ↑コメントよろしくお願いします。


   

   

 [wikipedia:豊田有恒]







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