空想力、冒険心、勇気、愛情をはぐくむSFの名作集!

<エスエフ>世界の名作
SFこども図書館(岩崎書店)

第6巻 うそつきロボット(くるったロボット)

(アイザック・アシモフ 作/小尾 芙佐・訳/山田 卓司・絵)

(1976年2月20日 第1刷発行)

 

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(こもりロボット・ロビイ)

 欧米人はロボットを道具や機械のように考えるが、日本人はロボットを仲間のように考える、というような記述を新聞の社説か何かで読んだ記憶があります。

 しかしここで描かれる子守りロボット・ロビイは、まるで人間であるかのように描かれ、グローリアもロビイを人間の仲間のように思っています。
 会社に返品されてから慣れない工場でぎこちなく働いている様子は、全く人間のようです。

 ロボット黎明期の人間との交流、少しの行き違い、そして仲直り。
 今後の人間とロボットの将来を象徴するかのような感動的なお話が冒頭に置かれました。

 

(水星ロボット・スピーディ)

(あらすじ)

 水星を調査する水星探検隊。
 冷房に使う鉱物セレンを掘りに行ったロボット・スピーディが帰ってこない。
 セレン鉱山の周りをぐるぐる回っているようだ。
 セレンがないと冷房が止まって蒸し焼きになってしまう!

 

(感想: 旧式ロボットはモビルスーツ?ロボノイド?)

 ロボットが鉱山の周りでぐるぐる回っていることや、そのロボットを呼び戻す方法については、アシモフが提唱したロボット三原則で説明できます。この件については、何かのジュヴナイルSF本(多分、SFベストセラーズ)の解説で読んだことあります。
 SF創成期はこういった色々な未開発の地を開拓していったんですねえ。活気にあふれたいい時代だったんでしょうねえ。

 水星に第一次探検隊が到着したのは2005年、その10年後の第二次探検隊の話ということになっています。
 現実の世の中は2012年になった今でも水星どころか火星や月の探検も実現されていません。

 この作品が描かれた当時は2005年というのは科学の進んだ夢のような時代だと思われていたのでしょう。
 未来に希望が持てたいい時代だったんでしょうねえ。

 登場人物は、赤毛で怒りっぽいマイケルと金色のひげを生やしたグレゴリイ。
 ロボット・スピーディ追跡では常にマイケルがリード。

 グレゴリイさん、最後まで見せ場はなしかと思ってたら、最後の身を呈しての命がけのスピーディ呼び戻し作戦の実行の時、マイケルを出し抜いて出陣。
 さすがアシモフさん、効果的な演出してくれますね。

 スピーディ捕獲作戦のためにマイケルが投入したのは、第一次探検隊が置いていった旧式ロボット。
 自分で動くことができずに、肩に乗って命令しないと動けないという設定です。
 何だか中途半端な設定ですね。非実用的というか。
 この小説のために作られたような設定です。

 しかしよく考えてみると、自分で考えて動くロボットの前段階として、人間が乗り込んで操作するという作業用ロボットの段階があると思うのです。
 言ってみれば、ガンダムでいうモビルスーツ、それより単純な例でいえば、「未来少年コナン」に出てきたロボノイドのようなもの。
 その、人間が乗り込んで操作する段階をもう一つ進めて、肩に乗って命令するという段階だと考えると、ロボット進化論的にも納得できるような。

 

 
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(うそつきロボット・ハービィ)

 製造ミスのため、読心能力を持つことになったハービィが引き起こす大騒動。

 落語的なドタバタ騒動です。落語にしてみても面白そうです。

 私が落語研究会に入ってたなら、この作品を落語にして演じてみたいですね。

 

(電子頭脳マシンX)

(あらすじ)

 未来社会。地球は電子頭脳Xによって万事うまく治められていた。

 しかし、コンピューターによる支配を快く思わない人たちが「人間同盟」を結成し、反対運動を繰り広げられていた。

 その日、20数年来起こったことのない事故が立て続けに3回発生。

 電子頭脳の判断ミスか?

 人間同盟の武力行使も始まった!

 バイアリイ地球大統領は対処策を相談するため、キャルビン博士を呼び出した。

 

(感想:電子頭脳による平和?)

 前の話ではまだ若くて結婚のことを真剣に考えていたキャルビン博士が再び登場。

 髪の毛が真っ白になり腰も曲がっているとのことで、あれからかなりの時間が経過したのでしょう。

 この頃には地球は電子頭脳Xによってうまく治められています。

 この方が間違いなく、人間に任せるよりうまくいくようです。

 この作品が描かれた当時、未来はコンピューターによって社会がうまくいく、という未来観を持てたのかもしれません。

 しかし21世紀になった現在、そういった楽観的な未来観は却って持てなくなったのではないでしょうか。

 

 本作品はコンピューター管理による楽観的なストーリーでしたが、星新一のショートショートでも色々描かれたのではないでしょうか。

 私が覚えているのは、コンピューターが狂ってしまって間違った命令を出し、偶然それが良い結果を招いたので、ますますコンピューターが狂って変な指令を出し、エスカレートしていく、というショートショートです。

 それから、『声の網』という長編もありました。

 
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 それはともかく、『電子頭脳マシンX』では、人間が自ら政治することを諦め、コンピュータに委ねることにした未来社会が描かれています。

 コンピューターによる支配、一見うまくいっているようですが、これは人間にとって良いことなのでしょうか?

 優れた支配者による独裁と平凡な人々による民主政治のどちらがいいのか、という命題と共通する問題提起があるように思います。

 

 
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(全てを読んだ感想)

 ロボット創世時代の子守りロボットから始まり、最後にはコンピューターによる人間社会の統治に至る歴史書となっています。

 SFやロボットの創世時代、そして科学技術の発展期に描かれたSFの古典ということで、未来への希望・楽観論にあふれています。

 本書では4つの短編が収録されているのですが、原作では9つの短編があるようです。

 本書では人類の未来は明るい、というような印象だったのですが、アマゾンのカスタマーレビューを読むと、原作は微妙に違うような。

 原作も読んでみたいのですが。

 

 この本、小学校の図書館にあったのですが、なぜか読むことはありませんでした。

 その後、高校時代から精神状態が思わしくなくなり、読書も思うようにできなくなり、完訳版を読む機会も逸してしまいました。

 今思うと非常に残念です。

 今思うと、小学校時代に本書を読み、中学か高校時代、遅くても大学時代には完訳版で読みたかったものです。

 やはり子ども時代には基本的なSFは読んでおくべきでしょう。

 特に完訳にこだわる必要はなく、少年少女向け翻訳でも構わないのです。

 その意味で、少年少女向けSF全集というのは必要です。

 SFこども図書館が冒険ファンタジー名作選と編成変えをして再刊されたというのはいいことだと思います。

 私なんかは旧版に愛着があるのですが、こんな風に変える方が現在の子どもたちに受けるということなのでしょうか。

 

 旧版のさし絵は、和田誠さんが描かれています。

 この方と真鍋博さんが、星新一さんの本のさし絵の多くを描かれていました。

 子どもの頃の私は、どちらかというと、色々細かく描き込んだ真鍋博さんのカットの方が未来風な感じがして好きで、和田誠さんの絵は余りにもシンプル過ぎて物足りなく思っていました。

 しかし大人になった今、見返すと、和田さんの絵の味わいが分かるような気がします。

 俳句のような、無駄を省いた最小限の線での表現ですね。

 

    

 

 新版の絵は、山田卓司という方です。この方の絵も好きなタイプです。

 他の巻の絵のような、萌えアニメのような、ライトノベルの表紙みたいな絵ではなく、こんな絵なら好きです。

 SFマンガ的な絵で、アシモフのこの作品にピッタリの画風です。

 しかし、和田誠さんの旧版と比べてみると、やはり和田誠さんの絵の方が上回っていると思います。

 但し、これは大人になった今の私が思うことですから、今現在の子ども達が比べると、どう感じるかは分かりません。

 物語の好みも、絵の好みも、時代や成長につれて変わっていくものですね。

 

    

 

 

 編集後記    ご意見ご感想お寄せ下さい。

 

 
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